CSRからCSVへ

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こんにちは! デザインこねこの「独立・創業・起業などに役立つ情報ブログ」です。日々更新していますので、よろしければフォローお願いします!

今日のテーマは「CSRからCSVへ」です。CSR(Corporate Social Responsibility)は企業の社会的責任、CSV(Creating Shared Value)は共通価値の創造です。

CSRが社会貢献活動のように本業の周辺活動であるのに対し、CSVは本業で社会に貢献するというものです。つまり、CSVは本業の事業と社会貢献が融合し、社会的価値の実現と同時に事業価値を確立することです。

今日は、デザインこねこの事例をもとにお話をさせていただきたいとおもいます。

東日本大震災

昨夜の地震はみなさん大丈夫だったでしょうか。私も久しぶりに2011年の東日本大震災を思い出し、テレビをつけました。

東日本大震災が起きた当時、デザインこねこは妻が創業して2年ほど、僕はデザインこねこの仕事に加わって一年経たない頃でした。まだまだ少なかったこねこの仕事が、この大震災で全くなくなるだろうというのは容易に想像がつきました。それどころか、社会全体がストップしてしまったような感覚さえありました。

「これは自分たちの前に社会が再起動しなくてはいけない。そのためには、お客さんや社会のために今動かなければ自分たちの未来はない。」

そう思いました。

世の中は福島の原発事故で電力不足が懸念され、輪番停電が行われるという事態に陥りました。僕らの仕事はパソコンを使うので電気がなければ仕事はできません。でも、その時間を外せばできないわけではありませんでしたし、実際に予定された輪番停電が回避されたことも何度もありました(それでも急に停電になったらデータが飛ぶので、腰を据えた仕事ができるわけではありませんが)。

逆に、当時僕らのメインのお客様だった飲食店の皆さんは、冷蔵庫の食材がダメになってしまったり、自粛ムードの中で電気を消して営業したりと、惨憺たる状況でした。

電気を消して営業していると、店内が暗くて外から見ると営業しているのかわかりません。また、まさに灯りが消えてしまった街は、人々の不安をさらに大きくしました。

そこで、そんなお客様の役に立つものを作ろうと考え、すぐに「節電中・営業中」と書いたポスターをデザインしました。

たった一枚のA4ポスターで出来たCSR

ポスターのデザインは優しい明るさを感じる明るくて柔らかいイエローを基調とし、「節電中・営業中」の言葉の下にはスマイルマークの口元を加えました。「笑顔で節電しながら営業中」、これが多分お店さんがお客さんに伝えたいメッセージではないかと思ったからです。

一番最初に作った「節電中ポスター」

このポスターはA4サイズに印刷して、知り合いやお客さんのお店のほか、知らないお店にも軒並み歩きながらご挨拶して配り、使ってもらいました。もちろんHPからダウンロードもできるようにしました。

僕の頭の中には、このポスターが色々なお店の扉に貼られ、消えてしまった街の灯の代わりに明るさを提供してくれるイメージが浮かんでいました。

そして、実際に程なくして僕らの「節電中ポスター」は自分たちが把握していない様々なところでも見かけるようになりました。僕たちにとって、自分たちのデザインが、仕事が、目に見えて社会にインパクトを与えたと感じた瞬間でした。その時から僕はCSRということを強く意識するようになりました。

この時、今でも重要だったと思う判断が一つだけあります。それは、ポスターに「デザインこねこ」の名前を入れないことでした。せっかく取り組むアイデアが、「営業」や「売名」などの誤解を受けてインパクトを失うことを恐れた上での判断でした。結果として、拡散する上では正解だったと思います。しかし、後述しますがCSVの難しさを知ったのもこの判断をした時でした。

新型コロナウィルス「対策中ポスター」

それから約9年後、日本では2020年1月3日に発熱した神奈川県の男性が新型コロナウィルス発生の一例目となりました。瞬く間に感染は拡大し、様々な事業運営に影響が出始め社会は大混乱に陥りました。東北の大震災の時のような、もしかしたらそれ以上の衝撃をもった社会の停滞の幕開けでした。私は、また「社会が動くために何が必要だろう」と考え、とりあえず「すぐ出来ること」として、またポスターを作ることにしました。

まだまだ新型コロナウィルスのことはわかっていませんでしたが、すでに明確になっていたのは「マスク、手洗い、アルコール消毒」の徹底が有効であるということでした。そこで、それをインフォメーションするポスターをデザインしました。また、この見えない新たな危機に対して迅速に判断、決断するためには情報を把握することが大切だと思い、ポスター下部にNHKなどの新型コロナ特設サイトのQRを配しました。

このポスターは「何ができるか」を考え始めてからデザインが完成するまで約2時間でつくりました。時間をかけるよりもより早くこの「道具」をみなさんに届けるスピードの方が優先順位が高いと判断していたからです。言語に頼らない方がいいので、フリーのアイコンを少しアレンジして整え、色はウィルスのストレスを感じさせないように、爽やかで清潔感のあるブルーとイエローの色味で作りました。こうして、土曜日に誰もいない事務所に出社し、一人きりで集中して2時間で一気に作りあげました。デザインこねこがこのポスターをダウンロードできるように公式サイトにアップしたのは2020年2月21日のことでした。

それから新型コロナウィルスの感染状況が悪化するにつれて、このポスターは日本中の方にコメント付きでダウンロードしていただくようになりました。飲食店向きWebメディアなどでも紹介していただいたり、大手の飲料メーカーの営業の方が配っていただいているという情報も知りあいづてに聞いたりと、色々な方のご協力によりたくさんの必要としている方たちに届いたようです。離れて暮らす友人が「みかけたよ」と写真を撮って送ってくれることもありました。それだけ新型コロナのインパクトは大きかったのだと、改めて思いました。

「卒業おめでとうポスター」

これは、新型コロナウィルスの感染拡大で卒業式などが行えなくなったというニュースを見て思いついたアイデアです。この時も「節電中・営業中」ポスターの時の経験が役に立ち、まちじゅうで桜色のポスターで卒業生をお祝いできたら素敵だなというイメージが浮かんだのです。これも、たくさんの方に店頭や街中に貼っていただき、「おめでとう」の想いを伝えるために活用していただきました。

(写真:東京都日の出町社会福祉協議会)

CSRからCSVへ

これらのポスターには、前述した東日本大震災の時の「節電中ポスター」のように、全てデザインこねこの社名もロゴも入れていません。つまり、これは「社会的価値の実現と同時に事業価値を確立する」というCSVにはなっていません。自社の宣伝に全くなってないわけではありませんが、ポスターのダウンロードが売り上げになっているというわけではないからです。

私は、まだ自分たちにはCSVを行えるほど実績や実力が足りていないと思っています。主幹のデザイン事業は社会貢献どころか、クライアント企業にお世話になっているオーソドックスな事業スキームです。CSVをやるということは、現在企業の皆さんへ商品として提供している価値を、今度は社会の価値と融合させることができなければいけません。それには、商品だけではなく、今まで以上にたくさんの人たちの信頼を得る必要があると思います。つまり、CSVの事業アイデアだけでなく、「君たちはもうそれをやってもいいよ」という社会での実績がパスポートのように必要だと感じたのです。

だから、私たちの今の目標は「CSRからCSVへ」ですが、それを無理に考えるのではなく、まずは目の前のお客様、地域の事業者の皆さんに必要とされるデザイン会社として在ることが大事だと考えています。

ですので、CSVへの事業転換や、生産効率を追い求めて本業を狭めるということをするのではなく、自分たちを頼りにしてくれるお客様に対して、できることは何でもやりたいと思っています。自分たちでできないことは、できる方法を調べて紹介します。

まずは「困っている方の役に立つ」ということ、その先に私たちなりのCSVへの事業アイデアがあるのではないかとおもっています。

\ちょっと一息/ こねこの本棚
【CSVでおすすめしたい本】

実は「CSRからCSVへ」というタイトルはこの本の項から拝借しました。
この中にはCSVを実践している企業がたくさん登場します。

まとめ

これからの時代、CSV企業しか生き延びることはできないのではないかと思っています。CSVにはCSRの「ISO」のような基準はありません。ですが、社会的にはSDGsや、持続可能、エシカル志向など、CSV事業の大きな潮流があると思います。起業や新規事業を考える際には、こういった社会の潮流に合わせたCSV的事業立案ができないか考えてみることをおすすめします。

デザインこねこの公式サイトから「CSR」の表記がなくなり、事業自体が「CSV」に変わるのも、楽しみに待っていてください。

こねこの本棚

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長嶺俊也 デザインこねこ株式会社取締役/クリエイティブディレクター/LOBBY ODAWARA オーナー兼ディレクター