おだわらのいいところ76

おだわらのいいところ

今月の末で、板橋のお地蔵さんの通りにある下田豆腐店さんが閉店されます。

ぼくたち夫婦は団地の一室で「デザインこねこ」を創業しましたが、仕事をしていくうちに人を呼べる打ち合わせスペースがあったらいいよねと話し合い、まだまだ仕事もないのに、一念発起して一軒家を借りました。
それが、下田豆腐店さんの斜め向かい、旧東海道沿いに建つ、築50年の2階建ての家でした。古い家は隙間が多いもので、廊下をあるいていると「あれ? 窓あいてたっけ?」と思うくらいの隙間風が入ってきました。
そんな家で職住一体の生活をしていたのですが、割と朝早くから仕事をするタイプの僕にとっては、早朝から動き出す下田豆腐店さんの気配を感じながらの朝の時間は、妙に集中できたのを思い出します。
結局、その家も手狭になってしまい、今度はすぐ裏の用水路沿いに建つ3階建ての家に引っ越したのですが、その家に住んでいた期間も含め、3年ほど板橋に住んでいたと思います。
僕らが、仕事終わりに今晩のおかずのがんもを買いに行くと、下田豆腐店さんの女将さんはいつもたくさんのおまけをしてくれました。
また、妻が妊娠したときには身体にいいものをくれたり、

子どもが生まれた時にはお祝いをいただいたり、抱っこしてかわいがってくれたりしました。
もちろん、だからというわけではなく、我が家は下田豆腐店さんの多種多様でオリジナリティ溢れる「創作がんも」、「やわらか木綿豆腐」、「油揚げ」が大好きでした。
本当に、よそのは食べられなくなるなあとおもっていました。

しかし、まさか下田豆腐店さんのものが食べられなくなるとは。
デザインこねこは新人が入ると下田豆腐店さんに連れて行って挨拶し、僕がセレクトしたがんも達をプレゼントするというのが、いつからか一つの習わしにもなっていました。
さらには、市外から面接に来た人にですら小田原の良さを知ってもらうために、案内したこともありました。
長く続いたお店を、おやめになることには、いろいろな事情があるとおもいますので、自分の思い出を引っ張り出してきて、ひとりよがりに悲しむのはこれくらいにします。
3月末の閉店まで、あと10日を過ぎましたが、いつも金曜日に水野がお届けしているデザインこねこの「おだわらのいいところ」ですが、今回は僕から土曜日の特別編として、あらためて「下田豆腐店」さんをご紹介致します。


(長嶺俊也)

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