おだわらのいいところ182

おだわらのいいところ


こんにちは。

デザインこねこの長嶺俊也です。


今日は、いつも更新してくれている水野が体調不良で、急遽ピンチヒッターで担当します。


改めて「おだわらのいいところ」を考えてみるのも面白いだろうと思ったのだがいざ考え出してみると今更何が相応しいのかと思いこの2、3日悩んでしまった。
いろいろ考えてみたが、先日訪れた「江之浦測候所」のことがやはり印象深かったのでその話で書き始めてみることにする。


施設の紹介はすでにさまざまなところでされているので割愛するが、施設全体が、日本を代表する現代アーティスト杉本博司氏が手がけた「作品」になっている。
その中でも特に有名な写真スポットになっているのが「冬至光遥拝隧道」だ。
コールテン鋼で出来た茶褐色の筒状になっており、その上を歩くことができる。
途中から空中に浮いた道は海に向かって張り出す。

そこから見える海景は雄大にひらけ、視線を遮る人工物は何もない。
鈍色の海面の一部を、薄墨の春の雲の上からかすかにこぼれさす

太陽の光が仄かに照らす。
おそらく古代と大して変わりがないであろうその光景に、

しばし呆然と意識を失う。
しかし、幅1mもない空中に浮かんだ道を歩くのはなかなかスリリングだ。

地表からの高さはさほどないのだが、何しろ眼下には木立や海が見え、

横からの風が吹くと自然と身構えてしまう。
しかし、そこに無粋な手すりや注意書きの類いなどは一切なく、先端の手前に、止め石が置いてあるだけである。
そこには、主と客の阿吽の了解があるのみだ。

風景としても、精神としても、思想としても美しい。
現代の日本は、注意書きや説明書きの立て看板、安全のための手すりや

柵だらけだ。

その多くは心配過多のお節介というより責任逃れを主旨としているため1%の可能性でも防止するよう、津々浦々まで無闇矢鱈と乱立している。
先日も二宮と橘の間を車で通りがかっていた時に、道沿いの斜面に見事な桜と緑の下草に目に痛いほど鮮やかな菜の花が咲いていたのだが、そこに斜めによくある緑の金あみが斜めに走り、なんとも言えない気持ちになった。
翻って、自分たちの仕事であるデザインの分野でも、同じように言えることがある。


日常でもっとも接することが多いパッケージデザインの分野でも売り手がうたいたい文句や、行政の決まり事の注意書きなどがどんどん増えている。
デザイナーの前にひとりの生活者としては、そこまでごちゃごちゃ説明してくれなくても自分で気に入れば調べるし、いろいろ注意してくれなくても文句は言わないから、身の回りに美しいデザインを増やして欲しいと思っている。
しかし、クレーマーのような人もいるからそうもいかないのだろう。
クレームと、クレーマーは違うので、まずはそれをAIで見分ける技術などを開発してもらい、21世紀中には精神的ガードレールのいらないデザインがあたりまえになる時代が来ればいいななどと思ったのである。

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