【意識領域イメージ化 アジア図像研究 杉浦康平さん(前編)】

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こんにちは!

デザインこねこの長嶺きわです。

9月に入り、時折少し風が涼しく感じられますが、まだまだ暑いですね!先日の台風や大雨の被害が、小田原市内や近隣地域にも出ていて、びっくりしています。最高気温を3年連続で更新しているというニュースもあり、異常気象が原因で起こる、災害の頻度が増えていると実感しています。できることからになりますが、災害が起こってしまった時の準備(心の準備も)ができればと思っております。

*写真は市民農園のバジルを使ったジェノベーゼです。フードプロセッサーを購入したので、今後使うのが楽しみです。

【一週間のAI / ITニュース】

8/28〜9/3までのAI / IT関連ニュースを一部、お知らせします。

9月2日

韓国で知人女性や少女らの顔写真を使ってAIで合成された性的な画像が、通信アプリ「テレグラム」で拡散している問題で、韓国警察庁はテレグラムの運営法人に対する調査に着手したと明らかにしました。テレグラムをめぐっては、仏警察が8月、創業者である最高経営責任者(CEO)のパベル・ドゥロフ氏を逮捕しています。

意識領域イメージ化 アジア図像研究 杉浦康平さん【前編】

本日は、日本を代表するグラフィックデザイナーであり、アジアの図像学研究者でもある杉浦康平さんをご紹介します。

グラフィックデザインの世界へ
藝大建築学科を卒業後


杉浦康平さんは1932年、東京に生まれました。現在92歳です。1955年、23歳で東京藝術大学建築学科を卒業後、高島屋宣伝部に入社しました。そこで制作した「LPジャケット」が1955年第5回日本宣伝美術賞を受賞し、わずか半年で独立しました。

1960年、28歳のときには、東京で開催された「世界デザイン会議」にパネリストとして参加し、東京オリンピック(1964年)のシンボルマーク指名コンペで、6名の候補者の一人に選ばれました。

【東京オリンピック(1964年)シンボルマーク指名コンペ候補者】

1961年には毎日産業デザイン賞(現・毎日デザイン賞)を受賞し、東京画廊のカタログデザインを手がけるようになりました。

バウハウスの理念を継承した
ウルム造形大学の客員教授に

1964年から65年、そして66年から67年にかけて、西ドイツ(当時)のウルム造形大学に客員教授として招かれました。ウルム造形大学は、第二次世界大戦後、バウハウスの理念を継承するために西ドイツのウルムに設立され、理想的なデザイン教育環境を築いた私立大学です。現代のアップル製品も、Bauhaus — Braun — Apple という系譜でバウハウスの影響を受けています。

西ドイツ・ウルムでの生活を始めた杉浦さんは、大学で教鞭を執りながら、物事を二つに分ける考え方に過度にこだわる西洋の物体主義的な概念と対峙する中で、日本やアジアの人間として「間」「色即是空」「空」といった概念に改めて気づかされました。そのため、学生への指導でも、物事をきっぱりと分けるような教え方はしませんでした。杉浦さんは、学生たちから「フェライヒト(vielleicht、ドイツ語で『もしかして』)先生」「パーハップス(perhaps、英語で『たぶん』)先生」とあだ名されるほどでした。

また、建築科を卒業した視点からウルムの街並みを見た杉浦さんは、建物がレンガを積み上げて作られていることに気づき、ヨーロッパの近代が「組み立てる」という概念に基づいていると理解しました。これは日本とは異なる文化的な差異であると感じ、日本人として日本やアジア文化の基盤に立つことが、20世紀以降の新しいデザイン観を見出す鍵だと確信しました。というのも、日本のデザインの多くがヨーロッパ志向に基づいており、多くのデザイナーがアジアや日本の文化を意識しないままデザインに取り組んでいると感じたからです。1960年代から70年代にかけて、ヨーロッパやアメリカの影響から脱却しようとするデザイナーはほとんど存在しなかったといいます。

アジア図像の研究

その後、杉浦さんは1970年代から80年代にかけてアジア図像の研究に取り組みました。アジア各地を旅し、古書店などで集めた本は5000点に及びます。杉浦さんはテキストよりも図像を重視し、大型本から小冊子まで、貴重な図像が一つでも掲載されていれば入手するという姿勢でコレクションを続けました。特に、図解や地図化されたものは重要視され、図解発想の基礎となる本が集められました。文化圏別ではアジア図像に焦点が当てられ、特にインド、中国、韓国、タイなどの東南アジア、イスラム文化圏、そして日本の図像が重点的に集められました。テーマとしては、神話的図像民俗学的資料、特に宇宙論的な図像や図解が多く含まれています。

杉浦さんの作品や資料、蔵書は武蔵野美術大学に寄贈され、同大学のいくつかの学科の先生方とともに、2009年度から2011年度までの3年間にわたってデザイン手法と造形思考に関する共同研究が行われました。

武蔵野美術大学 美術館・図書館が所蔵する「杉浦康平デザインアーカイブ」を紹介する公式ウェブサイト「デザイン・コスモス」は、ウェブサイト上に三次元的な宇宙空間を創り出し、そこに浮遊する杉浦デザイン作品の世界を、誰でも自由に、探索し、動かし、選択し、驚き、遊び、学び、楽しむことができる、画期的なデジタル・アーカイブです。ぜひご覧ください!
https://collections.musabi.ac.jp/sugiura_kohei/

いかがでしたでしょうか?
今回は、杉浦康平さんをご紹介しました。

造形作家の片山利弘氏は、かつて「もし、杉浦康平をグラフィックデザイナーと呼ぶのなら、世界中のデザイナーはデザインをしていない」と言いました。杉浦さんがデザインする主軸のメディアは「本」です。本というメディアは、多ページにわたる思考法を造形としてデザインする必要があります。多くのグラフィックデザイナーは、絵を描く延長でデザインを行っていると杉浦さんは言います。ポスターは壁に貼るため、裏がない片面の仕事ですが、書籍は異なります。

次回は、杉浦さんの後編として、ブックデザインを中心にご紹介いたします。

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長嶺 喜和|Nagamine Kiwa  facebook

デザインこねこ株式会社 代表取締役社長/クリエイティブディレクター/イラストレーター/デザイナー

1979年神奈川県小田原市生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科(一期生)にて、インスタレーションアートを学ぶ。在学中よりウェディングアルバム制作会社の仕事の受託をはじめる。もっと様々なデザインをお客様と直接やりとりをしながらつくりたいという思いから2009年に「デザインこねこ」を創業。小田原地下街「ハルネ小田原」開業プロモーション受注を期に2016年に法人化。その後も、小田原城のリニューアル「小田原城 平成の大改修」のPR全般などをはじめ、小田原市の自治会情報誌「小田原回覧板系フリーマガジン おとなりさん」の発行(自社事業、季刊7万部発行 *現在休刊中)など、小田原市を中心とした西湘エリアにて「地域密着のデザイン会社」として展開を続ける。画家である母の影響で幼少より絵に親しみ、現在は母の主宰するアトリエ・コネコで子どもたちへ向け絵画の講師も行っている。